「品田穣の鳥島紀行」 56年前のアホウドリとの出会い 4

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冷静なナチュラリストに返って


上の写真は、56年前に品田穣氏によって鳥島において実際に撮影された
「アホウドリ」の写真です。

この「品田穣の鳥島紀行」は、今から56年前 1964年 (昭和39年 )日本で第18回東京オリンピックが開催された年の12月に、気象庁の観測船「凌風丸」に便乗して鳥島に「アホウドリ」の調査に行かれた品田穣 ( しなだゆたか ) 氏の実際の記録です。


鳥好きの気象庁の所員に「アホウドリ」の繁殖地まで案内してもらった日の、午後からのお話です。

私は、「アホウドリ」をじっと見つめていた。
すぐ側に寝転んでも気にせず、全く人を恐れない「アホウドリ」
金色の頭の羽に陽があたり本当に黄金色に輝いて見える。

まだ、大平洋を回遊する前の時期なので目の前には30羽ぐらいはいた。
もちろん、餌を捕りに海に行っている「アホウドリ」もいるので、併せて、5、60羽ぐらいは居るだろうと思う。
でも、何万羽もいたと言う「アホウドリ」がこれだけの数かと思うと何とも言えない気持ちになる。
しかも、
棒で叩かれ殺され羽布団になったと言うのだからひどい、残った「アホウドリ」を何とか回復させないといけないと保護の責任を痛感した。

しかし、
「腹が減っては戦さができぬ」の言葉を思い出し、測候所の料理担当の職員が、待たせてくれたおにぎりを食べる事にした。

「アホウドリ」に出逢えたとは言え、海を見ながらの孤独な昼食は、「おにぎり2個と漬物」だけ、それはそうだろう、これから半年の間、何も買えない孤島「鳥島」の貯蔵食を、すぐ東京に帰る客人にサービスすることはない。
たぶん、測候所の料理担当職員はそう考えたに違いない、と少し思いながら、おにぎりにかぶりついた。

おにぎりと漬物を食べながら、
私は、「アホウドリ」と出逢った興奮をちょっと置いといて、冷静なナチュラリストに返って調査計画を考え始めた。

先ずは、「アホウドリ」の分布図を作る必要がある。それから始めようと思った。
だが、一人ではこれが意外に困難な事に気が付いた。
測量機械など持ってきていないので、
地質調査用に持ってきたクリノメーターしかない。

( クリノメーターとは・・・地質調査に用いる、地層面、断層面などの 走向、傾斜を測る道具です。
 ルーペ、ハンマーと共に、地質調査用の 三種の神器とも呼ばれる。) 
             

でも、クリノメーターでも方向と傾斜が図れるので、距離を歩測すれば簡易測量くらいはできる。
地質図の要領でやればいいが精度は保証しかねる。
その上、繁殖地は崖錐( がいすい )の斜面で斜度が15度以上はある。

( 崖錐( がいすい )・・・急傾斜の山麓に風化した岩石片が滑り落ちて出来た半円錐状の堆積物 )
              

「これでは、概念図しか出来ない。」どうしようか・・・

しかし、それでもいいやと思い直し概念図を作る事にした。

観察していて色々とわかった事がある。
「アホウドリ」は株立ちするハチジョウススキの側で抱卵する。
理由は分からないが、海岸近くの平地では営巣しない。そこは、クロアシアホウドリの営巣地になっている。

ハチジョウススキは崖錐( がいすい )の水はけの良い斜面に生育するせいかもしれない。

1日目は、こんな感じで終わった。
暗くなると、崖下に落ちる恐れがあるので、夕陽を見ながら5 時前に測候所に戻った。
夕食は、予想どおり質素なディナーだった。

鳥島には魚は無尽蔵にいるので、釣ればいくらでも釣れそうだけど、新鮮な魚料理は滞在中一度も出なかった。
冬で魚が釣れなかったのかもしれない・・・
でも、
「アホウドリ」はいくらでも海で魚を採ってくるのにな、と思いつつ・・・


この続きの、
「鳥島紀行」56年前のアホウドリとの出会い 5
「落ちてきた アホウドリ」は、下のところから、
Trishimakikou
 「品田穣の鳥島紀行 56年前のアホウドリとの出会い 5 」は、こちらから


⭐️品田 穣 ( しなだゆたか ) 氏 プロフィール
 1932 東京都生まれ
 1960 東京教育大学 ( 現 筑波大学 ) 理学部地学科
    地質学鉱物学専攻卒業
 1962 国立科学博物館 文部事務官
 1963 文化財保護委員会
    事務局記念物課 文部技官 研究職
 1968 文化庁文化財保護部 記念物課
 1974 東京農工大学 非常勤講師
 1985 東北大学 理学博士
 現在 東京農業大学客員教授
    (財)日本野鳥の会 常務理事

🐤なかなか専門用語が多くて手こずっています。
最後まで読んでいただきまして、有難うございます。

次回は、「アホウドリ」の詳しい観察をお伝えします。




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