上橋菜穂子さんの本の心に残るページ 4「夢の守り人」

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夢の守り人 を読んで

この物語は、トロガイ呪術師の多くの言葉が、私の心に残りました。


上橋菜穂子さんが、文庫版あとがき「昼と夜の間で」の中で

眠って見る夢と、憧れとして追い求めるものを、なぜ人は、同じ言葉で表現してきたのでしょうね。

日々の暮らしをこつこつと営んでいく人という生き物が、いま生きている現実ではない何かを、心の中で思い描く——それこそが「夢」で、それは遥か彼方にあるものだからこそ輝いて見える。
目が覚めたら消えてしまうものである「夢」は、それを表現するには、ぴったりの言葉だったのではないでしょうか。


また、

他の人々とは違うものを見てしまう「少しの人たち」のうち、深くものを考える人ほど、優越感ではなく、苦しさや哀しみを抱いているのだということを知るようになったのも、この頃でした。
「現実 ( 昼の力 ) 」が圧倒的だからこそ、「夢 ( 夜の力 ) 」が必要とされるのだという、ごくごく当然のことが、実感となって、心に沁みてきたわけです。


と、書かれています。




私の心に残ったページを紹介していきます。



120ページ トロガイ師がシュガに言った言葉
シュガが顔をしかめるのをながめながら、トロガイはさとすように言った。
「待つのはつらいわな。でも、できることをやるしかなかろう?
少し落ち着いたら、わしのいったことを、もういちど考えてみてごらん。わしの恩師が、よくいったものさ。すぐに役にたたないものが、無駄なものとは限らんよってね」



131ページ タンダにトロガイ師が、言ってくれた言葉を思い出して
「‥‥‥人はね、生きるのに理由を必要とする、ふしぎな生き物なんだよ。
鳥も獣も虫も、生きていることを思い悩みはしないのにね。ときに、人は、悩んだすえに、自分を殺してしまうことさえある。



192ページ シュガが自問自答している所
今はじめて気づいたこの可能性を立証するには、試行錯誤をくりかえす長い時間がいるだろう。それを思うと、沸きあがっていた気持ちがすっとさめた。それでも胸の底に、ふしぎな興奮がしっかりと根を張っていた。このわくわくする好奇心こそが、長い試行錯誤を乗り切っていく力になるに違いない。



199ページ タンダがチャグムに伝える言葉
「でも、おまえはあのとき、自分の人生をなんとか生きてみようと思ってたはずだ。帝になる人生という、おぞましく暗い闇に向かって、さみしい思いをかかえながらも、しっかり顔を上げていた。‥‥‥それはね、おまえが、そういう自分の姿が好きだったからじゃないかな」



332ページ バルサがタンダに蝉しぐれの中、伝えている
「自分の運命を呪っていたあいだは、人と戦って殺すことを運命のせいにして、それが、血まみれの手でもなんとか生きていける言いわけになっていたんだけどね。自分の幸せに気づいたら、もう言いわけできない。‥‥‥それなのに、わたしが考えられる稼業ときたら、やっぱり用心棒しかないときてる」




上橋菜穂子さんが、あとがき「昼と夜の狭間で」の中で

「夢の守り人」は、「夜の力」と「昼の力」の両方を知り、その狭間に立つことを選んだ人たちの物語です。彼らの喜びや哀しみに共振するものを胸に秘めている人に、歌声が呼び起こす風を感じてもらえたら幸せです。


と書かれています。



最後の、養老猛司さんの解説に

上橋さんの文章は、きびきびしていて、さっさと読める。リズムがいい。長いという気がしない。これは大切なことだと思う。文章はじつは体で書くもので、普通に言われるように、頭で書くものではない。リズムはその体から発する。


と、書かれているのを読んで、本当にそうだなと思いました。



今の世を生きる私たちも、時として、夢に逃れて生きている部分があると思いました。
それはそれで、ひとつのあり方だと思います。


一晩寝ると、気持ちが少し楽になる事がよくあるのは、私だけでしょうか?




この頃から、
「上橋菜穂子さまノート」を作り、物語に出てきた人生の指針になる言葉を書き留めるようになりました。

* すぐに役に立たないものが、無駄なものとは限らな
* 人は、生きるのに理由を必要とする、不思議な生きもの


などなど、そのフレーズを書き留めていきました。


時々、「上橋菜穂子さまノート」を開いて、心をリセットしています。





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