「品田穣の鳥島紀行」 56年前のアホウドリとの出会い 5

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落ちてきた「アホウドリ」


上の写真は、56年前に品田穣氏によって鳥島において実際に撮影された
「アホウドリ」の写真です。

この「品田穣の鳥島紀行」は、今から56年前 1964年 (昭和39年 )日本で第18回東京オリンピックが開催された年の12月に、気象庁の観測船「凌風丸」に便乗して船で鳥島に「アホウドリ」の調査に行かれた品田穣 ( しなだゆたか ) 氏の実際の記録です。


鳥島に着いてから、3日目
この日から単独行動、
誰もいない。
何があっても連絡出来ない。
心細い。
だが、
誰かに襲われる心配はない。
猛獣もいない。
だから外からの命の不安はない
代わりに、事故が
あっても全て自己責任だ。

何でも自分で決められるのが
自由と言うなら、
自由な天国にいるようだ。


今日は、昨日通った崖の上を通るのをやめて、月夜山 ( つきよやま 372m ) を迂回する事にした。
幸い、一面の火山高原なので見通しが良く、磁石さえあれば方向を見誤る恐れはない。
崖下に謝って落ちる恐れがない代わりに、火山砂礫と火山灰の無人の荒野は足を取られてとても歩きづらい。

前人未到の荒野を、冬の太陽を浴びながら南東の燕崎に向かって気ままに進む、役所への通勤と違ってラッシュもないし、いつ着いても支障がない。時間制限なんて全くない。
「ああ、いいなぁ〜 東京なんて帰りたくない」と思う胸の内。

これまで、砂漠に行った事がなかったが、
「きっと、砂漠ってこんな感じだろうな」
と思いつつ火山灰の山を越えて、のんびりと歩を進めた。
小さな孤島のはずだが見渡す限りの一面の大砂丘だった。
全く人はいない。
木はもちろん草もまばらな砂漠のような広漠とした荒原を通ると、ここは、人類の原風景と太古を思わせるものがあった。

1902年、北側の羽毛採集の部落で125人が噴火で全員死亡し、今でもしばしば
大噴火する火山だと思うとちょっと気味が悪い。


左手に山が見える、富士山に似たコニーデ型の火山「硫黄山」( 394m ) の美しい山容だ、
富士山の五合目以上の感じで見える。時間はあるし、後で登ってみようかなと思ったが、
意外に急で、その上、火山砂礫で火山灰を厚く被っているところがあり、蟻地獄の斜面を登るようだ。
それほど高くはないが、それなりの覚悟が必要だと見た。

燕崎の降り口はすぐにわかった。一応、地質専攻だから、地形を見誤る事はない。
崖を慎重に降り、昨日、出逢った彼女のところへ真っ先に行ってみたが、
「居ない❗️」
不安が過ぎる。昨日、近づき過ぎて巣を放棄したのであれば、責任重大だ。


私は、昨日すぐ側に寝転び見つめていた彼女の「上品な、金色の頭を、つぶらな瞳を」
思い浮かべながら、巣から少し離れた砂礫の上に座り込んだ
「どうしたのだろう、巣を変えてしまったのかな」などと思いながら、
周囲を見回し、他の「アホウドリ」の巣を観察し始めた。

*そういえば、後日談ですが、
昨日作った貴重な分布図は現存していない。何処かの政府のように破棄したわけではないが、
出張報告書につけたまま迷宮入りしたらしい。或いは、誰か研究者に見せてあげたのかも知れない。

私が言うのもおかしいですが、あの分布図は学術的な資料にはあまりならない物だったと思う。
何故なら、「アホウドリ」は、しばしば餌を取りに出かけてしまうので、島全体で何羽いるのか
一週間ぐらいの調査では捉え難いからだ。



「アホウドリ」の観察に戻ります。
「アホウドリ」の巣はハチジョウススキの株立ちの側か、ススキの中にあり親鳥と若鳥、それに、雛 ( よく見えないが )で、二羽から数羽で暮らしているようだ。
彼女は、昨日、一羽だけだった。そして、今は誰もいない。
巣を守るパートナーは居ないのだろうか。

そんなことを、取り留めもなく考えといると、陽射しを遮ったような感じがしたと思った瞬間、
「どさっ ! 」何かが空から落ちてきた。

一瞬、何が起こったのかと思ったが、すぐにわかった。
「アホウドリ」が空から着陸したのだ。
「アホウドリ」のあの飛んでいる優雅な姿からは想像できない無様な着陸だ。
白鳥の方がまだマシだし、ガンの算を乱す着水の方が理解できる。

それに引き換え、「どさっ ! 」、とはなんだ。

文字通り空から落ちてきた「アホウドリ」は、気を取り直したかのように、
ヨチヨチと私の方に近づいてきた。
上品な立ち姿のイメージとは違う可愛い歩き方だ。
昨日の、巣の中でうずくまった。
「彼女に違いない」

一人で朝食に行っていたようだ。

先ずは、無事でよかった「心配したぞ」と


🐥何事も無くってよかったです。本当に❣️



🐤 品田穣氏とは、彼の著書「人類の原風景を探る」についての講演の際
ご縁を頂き、今日に至っています。

私のブログ開設の際には、悩んでいる私を元気づけて下さいました。
そして、
たまたま、ブログの名前が「Albatrossの空」だったので、
56年前に鳥島に行かれ「アホウドリ」の写真を撮られた事を思い出されて、
写真を私に送ってくださったのです。
そこから、この「鳥島紀行」のブログが動き始めました

これからも宜しくお願い致します。


次回は、コロニーの様子と、「アホウドリ」の習性について

この続きの、
「品田穣の鳥島紀行」56年前のアホウドリとの出会い 6
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