叔母からのプレゼントの中には

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56年前の「子どもの日」のプレゼント




大阪市西区九条商店街のアパートに暮らしていた私は10才、

愛媛県の伯方島から、9才の時に大阪に転校してきた。

1965年5月に愛媛県の大三島に暮らす甘崎のおばちゃんから「子どもの日のプレゼント」が郵便で届いた。

今でもその箱を思い出すことができる。

少し丈夫な紙の箱(たぶんお砂糖が入っていた箱だと思う)の蓋には、赤い鶴の絵が描かれていた。

その中に、板チョコ、マーブルチョコレート、チョコベビー、パラソルチョコレート、いっぱいの色々なチョコレートが入っていた。

駄菓子が主なおやつだった私には、もう夢のような瞬間だった。

そして、私宛に、手のひらサイズの「合わせ鏡」入っていた。

甘崎のおばちゃん

大三島に住んでいた、父の妹です。

1965年(昭和40年)この時代に女の人が車の運転をするということは凄いことだった。

ご主人がフスマの張り替えの仕事をしていたので、仕事を手伝うという、その関係もあったのかもしれないが、おばちゃんは、軽トラックに乗り、50ccのスクーターにも乗っていた。

今から思うと、私にとって「スーパーウーマン」である。

甘崎のおばちゃんは、よくお祭りがあると、大三島の、隣の島、伯方島で事情があり、母方の祖父母に育てられていた姉と私を、大三島に呼んでくれた。

大通りの本屋さんの角を左に折れて、道なりにいくと、右手に家があり、玄関を入ってまっすぐいくと井戸がある。昔は、台所のところに井戸がある家が結構あった。

夏祭りだったのだろう、夏の暑い日に、おばちゃんのところに汗だくでたどり着いた姉と私に、

「よう来た、よう来たね・・・」と言って、

冷たい井戸水で砂糖水を作ってくれた。

それが、とても美味しくて・・・。

今でもその光景を鮮明に覚えている。

お祭りが終わり、伯方島に帰る時はいつも、角の本屋さんで本を買って持たせてくれた。

この頃、本を買ってくれたのは、甘崎のおばちゃんだけだった。

たまに、仕事で伯方島に来た時は、よく仕事場に一緒に連れて行ってくれた。大きなお家とか、大きな旅館とか、本当によく面倒を見てもらった。

今も「たまきちゃん」と読んでくれた声が耳に残っている。

そんな、甘崎のおばちゃんのご主人が病気で亡くなった。

それから、一週間後、甘崎のおばちゃんが亡くなったという電報が、家に届いた。

それは、自ら命を絶った知らせだった。

1966年7月21日

村上 福美 40歳ぐらい(亡くなった日はわかるのだが、誕生日がわからない、そして、父の妹なのでたぶん)

今では、詳しいことは、永遠の彼方。

父も、母もなくなり、知ることが、できない。

父も、母もあまり話したがらなかったから、私も聞けなかった。

父の受けた、ショックには、はかり知れないものを感じる。

今から思うと、甘崎のおばちゃんは、あの小さな大三島という島では暮らしていけるような叔母ではなかったのかも知れない。

大阪までは思わないが、尾道とか、今治とかに出て、仕事をしながら暮らしていけばよかったのにと・・・・。

そんな事ができる、甘崎のおばちゃんだったのにと・・・・。

届いた「子どもの日」のプレゼントの「合わせ鏡」は、今も私の大切な宝物として、三面鏡の引き出しに入っています。

もうとっくの昔に、甘崎のおばちゃんの生きた年齢を越していますが、

年を経るごとに私の中で存在感を増してきている、「合わせ鏡」です。

うん・・・・どうかわからないが、私も、甘崎のおばちゃんの血を、ちょっと引いている気がする時がある。

甘崎のおばちゃんがそばいいてくれたら、色々な事を相談できたのにと、最近つくづく思うことがある。

父や母とは、ちょっと違う私の思いを理解して、「うん、うん」と頷きながら話を聞いてくれたのではないかと・・・・。

今さらながら、「どう生きればいいのか・・・」を問う機会があったらよかったのにと思う、私です。



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